中学3年間で数学6点が67点へアップした(その1)
数学「6点」からの出発
「やった。先生。67点だった。」
彼が中3の中間テスト終了後、初めて塾に入ってきての第一報がこの言葉でした。
えっ「たったの67点なのかよ。」
という思われる方もいらっしゃるとと思います。しかし、実はU君の成績は入塾したときは惨憺たるものでした。中1の1学期の中間テストの平均点が、20点以下で、数学と英語については、なんと
数学 「17点」 英語「9点」
だったんです。正直言って「辞めてもらおうかな」(笑)と思ったくらいです。なぜなら、成績が上がるようなイメージが私自身全く湧かなかったからです。しかし、当時は塾をオープンしたばかりで、少しでも収入が欲しかった(現実は厳しいです・・・苦笑)ので、入塾してもらって指導をしていくことになりました。
■入塾後の最初の点数は6点だった
夏休みに入塾して、いろいろ試行錯誤しながら教えていました。本当にこの期間は、私自身も
「何を」
「どうやって」
教えていいかわかりませんでした。彼には、通常のやり方ではうまくいかなかったからです。彼の指導時間は、週2回の各1.5時間で、科目は、英語と数学です。私も何から手をつけていけばいいのか、わからなかったので、とりあえず、英語の単語を暗記してもらうことにしました。
まず、最初は、簡単な単語からです。
hello
dog
cat
book
pen
など教科書に出てくる基礎的なものばかりです。これを1時間かけて覚えてもらうことにしました。しかし、ここでは、私には予想にしていなかったとんでもないことが起こったのです。実は、彼を教えていて思ったのは、U君は勉強すればするほど、成績が下がるということです。
「そんな馬鹿な!」
ということが聞こえてきそうですが、簡単にいうと、モノを記憶するのに、
「整理して中々頭に入れることができない。」
ということでした。ですから、先程の英単語のテストも
1回目
hello
→ ○
dog → ○
cat → ×
book → ×
pen
→ ×
2回目
hello → ○
dog → ○
cat
→ ○
book → ×
pen → ×
3回目
hello →
×
dog → ×
cat → ○
book → ○
pen
→ ×
という具合にせっかく覚えたと思った単語も、2回ぐらいすると間違ってしまうのです。しかも、何度やっても同じです。最後には、やりすぎると、最初の点数より下がってしまって、何をやっているかわからないくらいでした。
普通レベルの理解力の生徒だとこんなことは少ないですが、本当に出来ない生徒にはこんなことが頻繁に起こるのです。
つまり、1時間で記憶できたり、理解できたりする量が極端に少ないのです。ですから、あまりたくさんのことが出来ないのです。
正直いってこれには参りましたね。だって当時の私は塾をオープンしたばかりなので、出来ない生徒には無料で補習授業をして、何としても成績を上げようとして延長していたのですから・・・。
「点数が低い」→「成績上げるには勉強時間を増やす」
というやり方が出来ないのです。いろいろ試しているうちに、10月になり、入塾して最初の中間テストがありました。そして、帰ってきたのが、
「数学 6点」
だったのです。本人もショックがあったようです。お母さんの方からも何か言われるかなとも思いましたが、何もありませんでした。そして、私もいろいろ悩んだ末、成績が思わしくない生徒を上げる方法を考えたのです。それは、
「成績が悪い生徒の成績を上げる方法1科目集中ドリル方式」です。
■成績がよくない生徒の成績の上げ方
成績の悪い生徒の成績を上げる方法は、実はいたってシンプルなのです。
よく家庭教師を頼まれて、ご家庭のお伺いすると、言われるのが、
「うちの子は数学ができなくて・・・・。」
と出来れば苦手科目からの指導を頼まれます。でも、これは非常に間違った指導なのです。というのは、生徒が割合成績がよくて、たまたま、「数学」だけが苦手なら、それでもOKですが、だいたいは勉強嫌いな子供が多いものです。それで、質問ですが、
「勉強嫌いな子が、苦手科目の勉強しますか?」
ということです。実際は、
「勉強は嫌い」
「数学が嫌い」
というタブルパンチでは、とても良い成績を残せません。それよりは、最初はまずは、
「得意科目を作る」
ことに集中してください。もちろん、スタートする時期にもよりますが、まずは、お子さんに
「勉強をやれば、できた。自分でも出来るんだ!」
という『自信』と『成功体験を積ませる』ことなんです。ですから、出来るだけ早く結果を出すためには、なるべく
1科目に絞って、得意科目に集中する
ということをやって下さい。そういう私も偉そうなことを言っていますが、実はこれは学生の家庭教師がやっていて成果が上がったからなんです。その先生も
「本当に上がってびっくりした。」
と驚いていました。実際に、子供の心理状態を考えると、子供のやる気を引き出すには「味を占めさせる=成功体験を得る」がまずは大切なので、結果をだしやす形の方がいいのです。これは、社会人になっても同じです。
社会人になっても自分のポイントとなるUSP(ユニーク・セールス・ポジション)(相手がおののく特徴)を持つ事が大切です。
私も長年、「苦手科目」からスタートしていましたが、あまり芳しくなかったのですが、この方法に切りかえると割と成果が早くでて、苦手科目も伸ばせるようになってきました。
それで、このU君は特に「得意科目」はなかったのですが、今後の入試も考えて、私は最初は「数学」に絞って指導することにしました。もちろん、後ほどは英語も指導するつもりではいましたが、まずは、自信をつけさせようと思ったからです。
といっても、数学も、「中1」のスタートからつまづいていますし、小学校の「分数の計算」もあやふやです。しかし、が彼にはいいところがたくさんあったので、それが成果に結びついたのです。
彼のいいところは、
「塾では真面目」
「言われたことをする素直さ」
この大きくはこの2つです。とにかくU君は他の生徒たちとは別メニューで勉強をスタートすることにしました。
数学では、中1の最初のところ、
「正の数負の数」「文字の式」「方程式」
までは最低理解できないと、残り3年間は全滅ですので、彼には最初の1年間はこれだけを指導することしました。
そして、彼に大きな変化が生まれてきたのです。
私が最初、彼に指導したことは、
「数学では、途中経過をきっちりと書く」
ということを徹底的に指導しました。数学が途中でできなくなる子の多いのは、
「決して途中経過を書かない!!」
ということが多いのです。数学とは、「論理の積み重ね」の科目ですから、私が成績を上げるためには、生徒の論理の積み重ねが、どこで間違っているかを把握しなければなりません。
例えば、
3+4+6+10+2=23 ×
だけだと、これを解いた生徒はどこで違ったかは全くわかりません。
3+4なのか、+10なのか、それが、
3+4+6+10+2
=7+6+10+2
=13+10+2
=23
と書いてあると、「あっ。この生徒は、最後の2を足し忘れたんだな。」とわかります。また、さらにレベルアップするために、
3+4+6+10+2
=4+6+10+3+2
=10+10+5
=25
という具合に、数学の「交換法則」を使って、
「先に10になるものを集めた方が計算が早くなるよ。」
とアドバイスすることもできます。こうやって、生徒の間違いを1つ1つ指摘して直して、「トレーニング」してあげることなのです。それをやっていくと、少しずつ成績が上がってきます。それを早くやると、成績が一気に上がるのです。しかし、塾でも生徒によっては、そううまくいくことばかりでは、ありません。
中には、
「そんなの面倒くさい。」
と言って一向に書かない生徒がいますが、こういった生徒は全く上がりません。U君と同じ点数で、T君もそんな生徒でした。
「そんなこと言っても、僕は僕のやり方でやる。」
「先生、暗記が、音読して、書いて覚えるのなら苦労しない。」
と言って、数学の途中経過もかかなかったり、英語の単語の暗記も「黙読」で覚えたりして、結局、3年になるまで、成績が上がりませんでした。
(ちなみこの生徒は、英単語を6個覚えるのに6時間かかります。もちろん、英語はいつも1桁の成績です)
話は、戻りますが、U君は、その点、言われたことをきっちりやる生徒でした。とにかく馬鹿正直に、1つ1つ正確に書いていました。
それと、私がやったことは、彼を褒めちぎったことです。勉強は出来ませんが、彼は、とにかく塾から帰るときは、いつも自分の机の周りを掃除して、一切無駄口を言いません。ですからそこを褒めたのです。
「みんな、U君を見習って。いつもきれいにして帰るでしょ。」
「U君は塾の模範生だ!」
と言っていました。もちろん、難点もありましたが、(彼は、自転車できていたので、雨が降ると塾を休みがちでした。また、机の掃除でも家では無茶苦茶だそうです)できるだけ、目をつぶって褒めるてやることにしました。
そして、方程式の計算が何とか出来るようになったとき、学年末のテストがあったのです。
「どうできた?」
「まあまあ。」
と言って帰ってきた、テストは
「45点」
でした。私が、
「おっ。まぐれ?」
と言うと
「実力。実力」
と嬉しそうでした。私も一度のテストでは、実力と信じていませんでしたので、まだ彼に力が完全についたかどうかわかりませんでした。そして、また、中2に入って1月期にテストが「中間テスト」「期末テスト」と2回ほどありましたが、数学の得点は、
「54点」と「52点」
という結果でした。テスト結果が、3回続くと実力も本物です。本人も、
「先生、これ教えて。」
「何でこうなるの?」
という具合に自分から積極的に聞くようになってきました。また、私は彼の力を上げるために、一緒に入ってきた友達も一部彼に教えさせました。
「●●君、そこは、U君に聞いてみて?」
「よーし。俺が教えてあげよう。これは、こう解いて・・。ダメだよ。きちっと途中の式を書かなくっちゃ・・・。」
「そう。そういう風に式を省略しない。」
だいたい、説明を聞いていると本人が理解しているかがわかります。(笑)もちろん、これは私の手抜きではありません。人を指導することによって、教える方は確認できますし、生徒も聞きやすいです。もちろん、説明がおかしければ、二人とも指導していきます。
そうしていると、U君自身が非常に数学に自信を持つようになり、
「数学ならできる。」
という自信がほのかに芽生えてきたのです。
中3になったばかりのときに彼は言っていました。
「本当に中1のときは、トンネルの中にいるのかと思った。先生に学校のことを無視して方程式までやりなさいと言われたけれど、全然進まなかったし、学校の授業はどんどん進んでいくし・・・。そして、最初に45点を取ったときは、本当は、『まぐれ』だと思って、信じていなかった。6点を取っていたから正直自信がなかった。」
強がりを言っていても、本当は心配なのです。本当に子供に必要なのが、
「励まし、応援です。」
しかし、この後彼の点数が一気に下がってしまったのです。
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